情 景 bP | ||
まえがき 自分の死を意識するようになったのは還暦を過ぎてからだった。死ぬことを考えるのは、生きることを考えることと同義語であるということでもあることを知り、これは決してマイナスのイメージではない。もっと明るく死を考えるべきだ。そんな時、生とは何なのだ。そして、その源なる生の原点はどこにあるのだという疑問が浮かんできた。そうだ、原点は15年間暮らした黒川村にすべてがこめられているのではないか。出発はそこから始まった。 65年前の記憶をどれだけ思い出すことができるのかー。 山形の寒村に生まれたのは65年前。それから15年間過ごした。そして東京へ出て20年過ごした。疲れた身体にムチ打つようにして茨城に流れ着き30年が過ぎた。生まれ育った山形には法事や同窓会に帰るぐらいで年に数回だったが、ぼくは必ず15年間住んでいた場所に立ち寄っていた。ぼくが暮らした家は跡形もなく消え田んぼになっている。しかし、ぼくの脳裏には田んぼからはっきりと見えるのだ。ここで生きていた自分がー。 |
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